胆のう粘液嚢腫

突然ですが、「胆のう」の役割をご存知ですか?

胆のうは、肝臓で作った胆汁を貯溜・濃縮して十二指腸に排出するための臓器です。
そして「胆汁」には、胃液を中和したり、脂肪消化酵素を活性化させたりする役目があります。

胆汁は、通常さらさらの液体ですが、何らかの要因でゼリー状に固まってしまうことがあります。
これが「胆のう粘液嚢腫」です。
胆汁がゼリー状になってしまうと上手く排出することができなくなり、このまま放置すると、胆のうが破裂して命に関わる状態になります。

先日、老犬ではあるものの、いつも元気で食欲もモリモリの子が、元気食欲がないということで来院されました。
念のため血液検査をすると、ビリルビンが上昇していたので、肝臓か胆のうの異常を疑ってエコー検査をしました。
すると、やはり「胆のう粘液嚢腫」を示す像が見えました。

胆のうエコー画像

胆のうエコー画像

この胆のう粘液嚢腫の治療ですが、「すぐ手術!」説と、「いやいや初期なら内服薬で何とかなる!」説があります。
今回の子は具合が悪くなったのが昨日からであったことと、吐き気もなく、腹部の疼痛も無いので、内服薬で様子をみることにしました。

しかし・・・数日後の再診で、体調が回復しないということで、開腹手術に踏み切りました。

開腹してみたら・・・本当にギリギリの状態でした。
周囲は炎症反応でガッチリ癒着しており、細心の注意で剥離していましたが、途中でティッシュの様に薄い膜に穴が開き・・・。
思い出すだけでも、私の寿命が縮むような手術で、「胆のう粘液嚢腫を見つけたらすぐ手術!」説に1票投じる症例でした。

幸いにも、順調に回復してくれて、元気に退院してくれ、ほっとしました。

余談ですが、固まった胆汁は「ゼリー」というより「海苔の佃煮」のようで、しばらく「○○○ですよ」が食べられませんでした。

胆のう粘液腫